センター長 摂待力生

物質量子科学研究センターは平成16年度に国立大学法人新潟大学の発足と同時に設置され,平成17年度には「卓越した研究拠点の形成を目指して行う教育・研究活動」を進めるコア・ステーションとしての認定を受け,新潟大学における物質科学研究の推進に中心的役割を果たしてきました。設立当初には, (1) 超音波を用いた4f電子系の四極子効果やラットリングなどの物性研究を進める強相関科学研究分野,(2) 中性子線による構造解析を用いたソフトマターの物性研究を進めるクラスター科学研究分野,(3) PCクラスター並列計算機を用いた第一原理計算や量子スピン系の物性研究を行う計算物質科学研究分野の3つの基幹研究分野がもうけられました。平成18年度には,基幹研究分野として,(4) 半導体点欠陥の基礎物性研究と産業技術への応用を進める半導体結晶科学研究分野,平成19年度には (5) 水素吸蔵合金の基礎物性と水素センサー開発を目指す水素材料科学研究分野を設置し,物質科学の研究教育を推進してきました。また,本センターでは低温室を設置し,ヘリウム液化機(液化能力100リットル/時)による液体ヘリウムや液体窒素の安定供給を行ない,物質科学および生命科学への研究支援組織として,本学において大きな役割を果たしてきました。  
 新潟大学のコア・ステーションの更新(平成26年度〜平成28年度)にあたり,物質量子科学研究センターでは,物質科学における世界的に卓越した拠点の形成を見据え,基幹研究分野を次の3分野に再構成し,研究教育の推進を計っていきたいと思います。その基幹研究分野は,以下の3分野です。

(1)新たな物質創成と複合極限環境での物性制御を行う物質創成分野
(2)先端的な超音波計測や精密磁気計測などを行う先端計測分野
(3)第一原理計算や強相関理論を展開する理論計算分野

新規超伝導体・磁性体などの物質開発,超音波を用いた強相関電子系の物理の解明,極低温・強磁場・高圧力極限環境での新奇物性探索を実験的に推進します。さらに,新潟大学の強力な理論物理系教員との密接な連携により,特色ある先端的研究教育拠点を構築していきます。
 また,これまでの物質量子科学研究センターで推進してきたように,超音波を用いたシリコン半導体結晶中の原子空孔や水素吸蔵金属の量子物性の研究など,基礎研究の中から社会の要請に貢献する知識と技術を創出できるような理学と工学との融合を常に意識し,実現していくことも重要です。これにより,物質科学の基礎研究への貢献,社会の要請に応える産学連携の推進,国際舞台で活躍する人材の養成を計り,得られた成果を社会にわかりやすく発信していきます。
 物質科学・生命研究分野の研究者への研究支援の役割としては,これまで同様,低温室を通して液体ヘリウム・液体窒素(寒剤)の安定供給を行うとともに,寒剤の使用に当たっての安全教育を行っていきます。そのためにも,ヘリウム液化システムなどの基盤設備の更新と拡充を進めることが,本センターの当面の任務として重要です。本センターの液化システムは設置から10年を超えることになり,老朽化のため寒剤の安定供給に支障をきたし始めています。また,最近では液体ヘリウムは世界的な供給不足に陥っており,外部から購入する事は極めて困難な状況にあります。そのため,液化機を保有していない研究機関での低温研究は厳しい状況となっており,本センターの重要性は増々高まっています。他大学・他研究機関からの共同利用・共同研究の申し込みに対応していく必要があります。低温室ではこれまで通り,寒剤を利用する物質科学分野の教員からなる低温室運営委員会を設け,供給価格の設定,液化業務の遂行,安全教育などを審議していきます。
 また,大型資金や設備の導入を推進し研究の飛躍的進展に呼応して,適時新分野を設立するとともに特任教員や客員教員を配置し,研究のより一層の推進を図っていきます。

(1)物質創成分野(摂待力生,広瀬雄介,山田裕,石川文洋,武田直也,中野智仁,加瀬直樹)
(2)先端計測分野(根本祐一,赤津光洋,三本啓輔)
(3)理論計算分野(大野義章,柳瀬陽一,奥西巧一,金鋼,椎名亮輔)