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バンド絶縁体とモット絶縁体
電気などを通しにく物質を絶縁体と呼びます。絶縁体はその起源から、バンド絶縁体、モット絶縁体、励起子絶縁体の3つに分類することができます。多くの絶縁体はバンド理論の範疇で理解される"バンド絶縁体"と呼ばれ、価電子バンドと伝導バンドの間にエネルギーギャップが存在します。ちなみに、エネルギーギャップが小さいものを半導体と呼び、半導体と絶縁体には質的な違いはありません。金属などの導体はバンドギャップが存在しません。一方、バンド理論では金属であるはずなのに、絶縁化する物質が見つかり"モット絶縁体"と呼ばれています。金属は図のように、電子が電気的に+に帯電した原子核周りの軌道を自由に動き回ることで、導電性が保たれています。ただし、電子間にはたらくクーロン斥力が大きいと、図の左のように電子が別の軌道に移動することができなくなります。この電子同士の相互作用を電子相関と呼び、電子相関の強い系を強相関電子系などと言います。モット絶縁体は電子相関が原因で、元々の金属状態から絶縁体へ転移します。興味深いのことに、絶縁体にも関わらず、このモット絶縁体は銅酸化物高温超伝導体の超伝導発現機構と密接な関係があります。
励起子絶縁体
励起子絶縁体は、超伝導を解明したBCS理論が発表された後、BCS理論を土台として1961年に理論的に提案された新しいタイプの絶縁体です。歴史は古いが、実際に励起子絶縁体となる物質が実験的に見つけられていませんでした。2010年頃にようやく有力な"候補"物質が見つかり、励起子絶縁体かどうかについてさまざまな角度から研究が行われています。これはBCS理論が本当に超伝導を説明できるかどうかが、いろいろな実験から検証された過程に似ています。摂待研では、試料作成を軸に独自の方法でこの研究にアプローチしています。
バンドギャップの小さな半導体などにおいて、図のように価電子バンドの正孔と伝導バンドの電子が結合した励起子(exciton)を形成し、この励起子が自発的に生成され凝縮状態に至る、というのが励起子絶縁体の起源です。励起子は電気的に中性なため、電気を運びません。また、バンドの観点から見ると、伝導バンドの下端と価電子バンドの上端が平になり、元々のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを持った状態になります。さらに、励起子の凝縮は、励起子がスピンS=0or1のボーズ粒子であるので、ボーズ・アインシュタイン凝縮あるいはBCS理論と同様な理屈で理解できます。また、励起子は半導体や光デバイスにおいても重要な役割を果たしています。