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純良単結晶育成 重い電子系の物理 フェルミ面 超伝導 励起子絶縁体

 重い電子系の物理


重い電子系とはその名の通り、電子が重くなっている状態のことを言います。通常の金属では、伝導電子あるいは自由電子同士はほとんど相互作用することなく、電子を気体分子として扱うことができ、物質中を自由に動き回ることができます。一方で、電子同士の相互作用(クーロン相互作用)が強い系(強相関電子系)においては、伝導電子は互いに避けながら動くため、物質中を自由に動き回ることができず、ノロノロと動きます。このようなゆっくりとした電子の動きは、電子の質量が重くなったと解釈することができ重い電子系と呼ばれています。重い電子系は次に説明する量子臨界点に近い物質として知られ、盛んに研究されています。

量子臨界点
磁気秩序などの相転移温度Tordが極端に低いと量子揺らぎを反映した奇妙で面白い現象が発現します。Tordは下の相図で示したあるパラメータδで制御可能です。特にTordが絶対零度となるδcを量子臨界点(Quantum Critical Point, QCP)と呼びます。δは実験的には圧力・磁場・元素置換などに対応しており、私たちは物質育成から高圧・強磁場・極低温における物質の新規な状態の観測を目指しています。このような相図は重い電子系化合物だけでなく、銅酸化物高温超伝導体や鉄系超伝導体など多くの物質で見いだされており、そのエネルギースケールが異なるだけで、本質的に共通している部分も多いです。

圧力誘起超伝導
f電子系では近藤効果とRKKY(Ruderman-Kittle-Kasuya-Yosida)相互作用が互いに拮抗しているために、相転移温度が数Kと低いものが多いです。上記の二つの効果・相互作用は圧力で制御可能であり、Ce化合物の場合、磁性体に圧力をかけていくと、磁気秩序温度が小さくなり、0 Kとなる量子臨界点に到達することが知られています。この時、量子臨界点近傍の圧力では磁気ゆらぎを媒介とした非従来型の超伝導や非フェルミ液体的な振る舞いが観測され、興味が持たれています。圧力に加えて、磁場の印加によって価数のゆらぎが増強され超伝導を起こすという理論もあります。このように圧力・磁場で新たな電子状態を作り出すことができ、単純な物質育成だけでなく物質開発の一つの方法ととらえることもできます。